近未来の自己催眠技術 ニューロフィードバック

『「心の病」の脳科学』(講談社BLUE BACKS)には被験者自身が自分で自分の脳活動を誘導するニューロフィードバックという手法が紹介されています。2011年に開発された実際のシステムの名称はDecNef (Decoded Neurofeedback)で、顔の好みを変化させたり、ヘビやクモなど苦手なものに対する恐怖反応を緩和させたりすることに成功しています。

装置はfMRI(機能的MRI)を用いて頭皮に着けた電極で脳活動を反映した血流量を計測して、それをミリメートル単位の精度でリアルタイムに解読器を通じて表示することが可能になっています。

ニューロフィードバックの手続きは以下のようなものです。

1. 解読器で対象者がたとえば赤色を見ている時の脳活動のパターンを図示化します。

2. その後、たとえば縞模様など(赤色が用いられていない)図を見せながら、脳活動操作を行なってもらいます。この脳活動操作は単に対象者に色々考えてもらうことを指しており、数を数えるケースもあれば、英語を翻訳したりなど、対象者が自由に決められます。この脳活動操作を6秒間行ないます。

3. 6秒間の脳活動操作の結果の脳活動の状況をデコーダで表し、赤色を見ている際の脳活動パターンとの合致度合いをシンプルな円などで表示して対象者に見せます。円が大きければ大きいほど合致度が高いなどのルールで示すということです。円が大きいほど何らかの報酬が多くもらえることにします。

4. 1から3の流れを1日1時間、3日間繰り返した後、対象者に縞模様を見せると「赤っぽく見える」と回答するようになります。

つまり、自分の脳活動の状況を予め決めておいた状況に意識的に近づけていくことができるプロセスと言うことです。これは自己催眠を科学装置を用いて行なっていると看做すことができます。

現状では実験のサンプルがまだ少なく、効果も人によってばらつく(年齢が高まると脳活動の誘導がうまくいきにくくなるなど)ため、実用にすぐ供される段階ではないようですが、ヒプノセラピー的な課題解決がこのような装置によって誰にでも施されるものになる日はそれほど遠くはないのかもしれません。

☆参考書籍:『「心の病」の脳科学