進化のカギは未成熟にあること

ネオテニーと言う現象があります。「動物で観察される、性的に完全に成熟した個体でありながら非生殖器官に未成熟な、つまり幼生や幼体の性質が残る現象のこと」です。人類とチンパンジーの遺伝子はほとんど変わらず,進化の道が分かれたのも600万年前で、生物全体の歴史上、それほど昔ではありません。それなのに、なぜ人類とチンパンジーはこれほどかけ離れた存在になったのか。その答えも、ネオテニーにあると言う説があります。

「脳の学習能力が最高となるのは脳が完全に成熟する前であり、人間はネオテニーによって身体の幼年期間が長くなり、脳が発達する機会が増えたことが人類の進化に結びついた」と考えることができるというのです。

ことは単に身体的な発達の問題だけではなく、行動のパターンにも影響を及ぼします。幼児化すると、生きて行くために集団化しやすく、社交性が高まります。それに対して、幼児化が見られないチンパンジーはオス間の競争が激しく、集団の中の相互協力は限られたものになり、600万年前のアフリカの乾燥地では生き残ることができなかったと言われているのです。この結果、チンパンジーは森の中の限られた環境に移り棲むことを余儀なくされ、人類の祖先は乾いた草原地帯で生存できたのだとされています。

さらに、人間の中でもネオテニーの度合いの違いがあることが発見されています。他の人種に比べて、モンゴロイドの幼児化維持の度合いが高いと言われています。そのため黄色人種は比較的集団主義的な傾向が強くなっているのという風に考える説まであるのです。

今や世界に冠たる日本のオタク文化は、このような日本人に強く現れるネオテニーの成果物である可能性があります。催眠技術の暗示は、本人が本質的に受け容れやすい意味構造にすることが重要です。催眠の日常への応用はむしろ欧米において進むようになっていますが、その技術の採用の際には、こうした日本人の特性を加味しつつ行うことが必要であるのかもしれません。