生田斗真主演の映画『秘密 THE TOP SECRET』を見ました。この映画の主題は、生前に見た映像記憶を死者の脳から再生する技術です。死の直前まで死者が見ていたものが分かるので、犯罪捜査上の手掛かりが膨大に手に入ることになります。
この技術に関して興味深いのは、殺害された女性が最期に見た殺害者の顔は悪魔のようになっているなど、映像記憶は必ずしも現実を反映していないことです。生田斗真演じる主人公も「脳に蓄積された記憶は極めて主観的だ」と喝破しています。催眠技術による記憶意識支配によって、普段思い出せない記憶を引き出すことができますが、その記憶も事実とは限らないことと共通した、人間の記憶に関わる適切な前提だと思います。
この主題以上に催眠技術に関わっているのは、劇中最大の凶悪犯罪者の方です。この犯罪者が、彼からセラピーを受けるために集まった9人の人間に、瞑想をさせた上で催眠暗示を入れて、日蝕を見ると自殺するようにしているのです。彼の背後、被験者の真正面の壁面には日蝕の図が掲げられ、彼が円形のカラビナのようなもので、カチッ、カチッと鳴らしている音を聞かせることで、誘導を進めています。
以前、このブログの記事にも書いたように、人間、それも初対面の人間に一発で暗示を入れるだけで、自殺に至らせるのは、非常に困難です。それをすんなりやってのけて、全員を死に至らしめるのは、スゴ技です。
しかし、それ以上に興味深いのは、自殺者の映像記憶からこの「死の催眠施術」の場面を見た捜査官が「メスメリズムか」とすぐに断定することです。映画『CURE』の犯罪者が第三者に他殺を行なう暗示を入れた技も「メスメリズム」と呼ばれています。
犯罪者が冷酷な犯罪を引き起こすための、おどろおどろしい催眠技術は、どうも、明確な根拠なく「メスメリズム」と呼称されることになっているようです。
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