そよ風の誘惑 ~アウトドアの催眠誘導の可能性~

催眠の施術は勿論、ショーの催眠も普通は屋内で行ないます。それなりに静かなところで、それなりに明るくないところが、催眠には適していると普通は考えられています。

人間は普段から頻繁に浅い変性意識状態になっています。催眠術師が誘導して発生する変性意識状態に比べて、一般に浅く不安定ですが、非常に頻繁に変性意識状態になっていることは間違いありません。

例えば、撫擦法と言う誘導法があります。サワサワと肌を撫で擦る行為を重ねて、対象者を変性意識状態に導く誘導法です。マッサージでボーッとした気分になるのもこの原理です。この誘導法は、別に手で触れなくても可能です。絹のような布で体を擦っても、同様な効果が出ます。そして、擦るものは固体でなくてもよく、柔らかな風に当たっていても、撫擦法の原理は発生し得るのです。

もう一例。音響法を考えてみましょう。無意味な音のパターンをずっと聞かせると、対象者が変性意識状態に陥る誘導法です。メトロノームの音を聞かせる誘導法もこの原理です。波の音や川のせせらぎの音、さらに、雨の音や滝の音などでも、同じ原理が働きます。「閑さや岩にしみ入る蝉の声」と言う有名な芭蕉の句も、蝉が鳴き続けているのですから、物理的音量として静かな訳はありません。蝉の声による変性意識状態と考える方が妥当でしょう。

このように考えると、アウトドアでも自然環境の中で催眠誘導ができる場面が存在することが分かります。「催眠ホレさせ術」の中でも、このような原理に触れていますが、これならば、対象者に「催眠を掛ける」と伝えた上でラポール形成をしなくても、そして、催眠への抵抗を回避しつつでも、催眠誘導ができそうです。