『トリコ』の「アルティメット・ルーティーン」にみる自己催眠

人気マンガ『トリコ』のコミック第27巻で、主人公トリコは友人の愛丸から究極の技を教わります。その名前は「アルティメット・ルーティーン」。つまるところ、思い込みの力で、具体的には、敵に対して、「勝てて当たり前」、「既に勝っている」と揺るぎない確信をもつことだろうと考えられます。

一般住宅に訪問販売をする営業担当者に同様の話を聞いたことがあります。突然、見ず知らずの人間の家を訪ねて商品を売ろうとするのですから、当然、何が起きるか分かりません。どんな人間が出てくるかも分かりませんし、こちらに対してどんな反応をするかも分かりません。そのような状況でも、販売実績を上げられる営業担当者は、「この商品をお客さんは買って当たり前」、「買うのが普通なので、わざわざ教えに来てやった」と言うような思い込みができていると言います。トークは事前に練って、執拗に練習をするのだそうですが、その際に、この「“当たり前”感」が持てることが重要と言います。

トリコのアルティメット・ルーティーンと原理が全く一緒で驚かされます。トリコは飛ばすことができる手刀の斬撃を出す際に、掌をこすり合わせる動作をします。そのギリギリと音を立てる事前動作と、敵を倒す自信に満ちた態度で、敵にも自分がやられるイメージが伝わることにより、アルティメット・ルーティーンは完成するとされているようです。

訪販の場面でも、営業担当者の言動から、相手が「これは買って当たり前のことなんだ」と思いこむと考えるべきなのでしょう。営業担当者は、その感覚を得るまでトーク練習をしますが、無心で練習を反復する心境は変性意識そのものですから、自己催眠が原理的に働くはずです。この結果、自分の中に「できて当たり前」、「既にできている」と言った感覚が書き込まれるのだと考えられます。簡易な自己催眠の方法はたくさんありますから、それらを組み合わせれば、反復練習の回数もぐんと減って、より効率的になることでしょう。