ルディー和子の『格差社会で金持ちこそ滅びる』の中にノースウェスタン大学の心理学者らによる研究が以下のように紹介されていました。
「感染症の流行、不安遺伝子、集団主義文化と、三つの要素の関係を探り出したノースウェスタン大学の心理学者たちは、最後に、うつ病の発症率との関係を調べてみることにしました。
(中略)
すると、驚いたことに、不安遺伝子の保有割合が高い東アジアでの精神障害発症率が非常に低い。たとえば、日本のうつ病発症率は一〇パーセント以下でした。反対に、不安遺伝子保有率が低い欧米先進国のうつ病発症率は一〇パーセントを超え、フランスや米国のように二〇パーセント以上の国もありました。
(中略)
研究者たちは、その理由を、この地域が集団主義文化であるからだと結論づけました。」
うつには色々なタイプがありますし、それらの傾向をどのようにとらえたのか、この本の中の記述からは分かりません。また、今回の調査パラメーターには含まれていない宗教面の価値観なども、一神教は他の宗教に比べてストレス性が高いという説もあるので、本来加味されるべきかもしれません。
しかし、集団主義的な文化がこの研究の指し示す通りうつを抑制する効果を持つなら、社会の個人主義化はうつを増やすことになります。全世界的な感染症の蔓延で、人々の交流が長く制限され、物理的にも他者とのコミュニケーションが減ってきているのは日本も例外ではないように思えます。
伝染病そのものよりも、そういった精神状態から自殺による死者の激増の方が問題と指摘する声もあります。こうした背景にある社会環境変化に対して催眠技術は基本的に無力ですが、個々人や小集団のうつ的な心理の緩和解消には絶大な効果をあげることができると、師匠の吉田かずお先生も言っています。ヒプノセラピーの可能性はこのような機会にこそもっと見直されるべきかもしれません。
☆参考書籍:『格差社会で金持ちこそ滅びる』
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