ティーンズ世代向けの恋愛小説が図書館にさえ並ぶ時代になりました。その映画化作品をたまに見てみると、お決まりの壁ドンが散発的に登場します。先日「催眠は催眠術師がかけてなるもの」という前提で知人が催眠術について尋ねて来たので、壁ドンを例にしてその認識を新たにしてもらいました。20代前半の彼女と共通に見ていた映画があり、その中に壁ドンが登場していたのです。
大抵の場合、映画の舞台は高校などの学校で、付き合うほどではない程度に親しい男女の生徒がいて、女子が男子の唐突な壁ドンをきっかけに、その男子を意識したり交際に至ったりするような展開です。
催眠技術的に考えると、相応に親しい時点で既にラポール形成はできていると考えて良いでしょう。少なくとも、変なことや意味不明の言動を相手が突然自分に対してしてきても、強い拒絶感が湧かない程度の親しさにはなっているはずです。そうすると催眠施術の次の段階は催眠誘導です。
突然壁をドンと叩けば、普通は驚きますから、催眠誘導の驚愕法が働きます。驚愕法は本来「ハッ」とする程度の驚きでも十分効果が出るので、壁を叩いたりすれば間違いなく効果が生まれます。さらに壁を叩いた手で逃げ場が無くなりますから、見知らぬ相手なら恐怖心から腕を振りほどこうと抵抗するかもしれませんが、親しい相手なので驚いたまま相手を見つめるはずです。顔と顔がかなり近い凝視が生まれます。凝視法です。先程の驚愕法同様にかなり確実に入ります。
催眠誘導が完成して催眠状態が発生したら、暗示を入れることになります。「俺と付き合えよ」とか「俺がお前のことを守るからな」などなど、物語によってややバリエーションがありますが、本人が言われていやではない言葉なら、完全に暗示として書き込まれるでしょう。
こんな風に、催眠技術は日常で催眠術師でもない人々によってどんどん実践されています。催眠状態は誰しも普段からなるもので、そんな日常に埋もれている催眠状態さえも利用できるのが催眠術師なのです。
☆映画『L・DK ひとつ屋根の下、「スキ」がふたつ。』(DVD)
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