“催眠” と “洗脳” は違うのか?

催眠技術について話していると、「催眠と洗脳はどう違うのか」と尋ねられることがあります。

「人間の無意識に暗示の形で命令を書き込む総合的な技術」が「吉田式催眠観」での催眠の定義です。ですので、一般に「洗脳」と呼ばれる行為も「催眠」のうちです。

一般の催眠術師の多くは、暗示がずっと対象者を縛るのは、「催眠」ではなくて「洗脳」だと考えて区別しています。吉田先生の考え方を聞かせると、「それは、多分、本人も望んで暗示の内容を受け容れて、それが習慣として定着したからだ。暗示の記憶として留まっていて効果が続くのではない」と言うような解釈をします。

しかし、「もし、本人も望んでいる内容の暗示を習慣として定着させているが故に、後催眠暗示が半永久的に続くのであれば、無意識に書き込まれたトラウマの存在を説明できない。それに催眠施術で色々なクセを解消したり悩みを解決しようとしているのなら、その効果がずっと続くようにしなければダメだろうし、現実に俺がやった施術の効果は続いている」と言うのが、吉田先生の見解です。

一方でネット上のブリタニカ国際大百科事典の「洗脳」の項目を見ると、「個人の思想や価値観を,物理的,社会的圧力を加えるなどの操作によって必ずしも本人の欲しない方向へ急速かつ大幅に改変させること。共産主義国家などで行われた強制的な思想改造が知られる。感覚遮断や賞罰の操作などの反復による学習の一つといえるが,その効果は永続的でない場合が多いといわれる」と書かれていて、洗脳の方がむしろ長く続かないという解釈がなされています。このように用語定義は混乱しています。

一般の人に向かって、「催眠と洗脳は実質一緒だ」と言い切ると、普通は警戒されますので、催眠を掛ける際の「ラポール形成」に影響が出かねません。私は催眠術師の多くが「催眠と洗脳は別である」とことさらに繰り返す背景には、こうした事情も一つの要因としてあるのではないかと考えています。

☆参考書籍『伝説の催眠術師、吉田かずお先生からならったこと: 二年目の催眠感想文