催眠誘導ゼロ! 横でつぶやくだけで暗示を書き込む!

かなりワル乗り事例なのですが、催眠誘導もせず、拒む相手に対して横でつぶやくだけで暗示を書き込むことに成功しました。前から見知っていて、冗談も通じる相手のことなので、倫理的な追及はご容赦願います。

以前、息子さんに催眠で勉強習慣をつけたことがある小料理屋さんで、カウンター席に座っていると、隣に知り合いの20代の女性が来店して座り、寿司を食べ始めました。催眠談義になり、「けど、私かからないもん。かからない。ダメダメって思ってたら、かからないんでしょ」と言われたので、一応その原理は認めつつ、「んじゃ、ちょっと試してみるか」と私が言い出しました。

「一口食べるごとに、ワサビの味がどんどん口の中で広がっていく。もう、何を口に入れても、ワサビの味しか感じられない。ワサビの味ばかりがどんどん広がる」と私はブツブツつぶやきました。

「え~、そんなことないもん。ナイナイ。そんな変な催眠入らないもん」と、私と目も合わせないようにし、私が一言いうごとに彼女は否定しながら食べ続けていました。そこで、「入らないと思うほど、暗示の言葉が気になって来る。暗示の言葉、ワサビの言葉が、頭からどうやっても離れない…。さあ、どんどん口の中にワサビの味が広がってくる」などと否定を軸にして暗示を強化して、最初から2分程続けてみました。

寿司にはもともとワサビが入っていますから、変化は感じられなかったようですが、「はい、お茶」と出されたお茶を飲むと、酷く苦くなっていたようで、「うわぁ、これ何が入っているの」と騒ぎ始めました。もちろん、普通のお茶です。

旧知の仲で「この人は催眠術師である」と言う確信が彼女にはあったはずですが、誘導も何もなく、目を見ることもなく、否定する相手に対して、横でつぶやくだけで、3分も経たず、暗示が書き込めたことになります。誘導の前段に必要とされているラポール形成の意義についても再検証が必要と思い至りました。

結果確認の後、ネイルアートで飾られた彼女の親指の爪をじっと見てもらって、暗示を解除して、事なきを得ました。催眠芸の範囲でぎりぎり収まったワル乗りでしたが、貴重な知見が得られました。

☆参考書籍:『吉田かずお式催眠術のカナメ ラポール形成を徹底解剖する: 催眠誘導をより確実に行なうための方法論