ドーパミンが脳内快楽物質で、それを強く情事求める状態になるのが各種の依存症です。著書の『ドーパミン中毒』でスタンフォード大学医学部教授のアンナ・レンブケは、ゲーム、SNS、酒、ギャンブル、薬物、恋愛、セックスなど、快楽をビジネスにする「ドーパミン経済」が、特にスマホの普及以降加速的に全世界的に広がっており、現代人が依存に簡単に陥る社会が到来したと警鐘を鳴らしています。
彼女が依存症への対応プロセスに必要な要素を、頭文字をとった「頭字語(アクロニム)」でDOPAMINE(ドーパミン)とまとめています。
・D: Data 「データ」
・O: Objective 「目的」
・P: Problems 「問題」
・A: Abstinence 「節制、禁欲」
・M: Mindfulness 「マインドフルネス」
・I: Insight 「洞察」
・N: Next Steps 「次の段階」
・E: Experiment 「実験」
各々の要素の説明は割愛しますが、注目すべきは要素の中にマインドフルネスが含まれていることです。書籍の中でマインドフルネスについて…
「マインドフルネスという言葉は今ではあまりに使われすぎて、意味がよく分からなくなっている。しかし、もともとは仏教の精神的伝統である瞑想から発展してきたもので、欧米では健康的に生きる訓練として様々な分野で取り入れられている。現在では欧米人の意識に完全に浸透し、アメリカの小学校では日常的に教えられているほどだ。(中略)マインドフルネスとは簡単に言えば、自分の脳がやっていることを観察する力のことだ」
と書かれています。そして、マインドフルネスが「ドーパミン断ちの最初の数日は特に重要になる」と述べていて、それが自分の押し寄せる辛さや渦巻く感情を許容し冷静に受け止めることにつながるからであると説明しているのです。
本来のマインドフルネス瞑想の原理は、レンブケが意図したことの延長にある「あらゆる体験を評価せずにありのままの状態で観察する観瞑想(ヴィパッサナー瞑想)」のみならず、「呼吸状態などの或る特定の対象に注意を集中させる止瞑想(サマタ瞑想)」も組み合わせられているものの筈で、単に自分の体験・体感を許容するに留まらず、集中によって自らを変性意識状態に導き心を鎮める自己催眠でもあります。
レンブケの解釈は置いておき、自己催眠の一種としてのマインドフルネスが依存症への対処の主要な要素の一つであるとされていることは注目に値します。
☆参考書籍:『ドーパミン中毒』
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