「さらに人間は、テクノロジーを発達させ、その記憶媒体を大容量にしました。友達の連絡先どころか、自分の携帯電話の番号さえ記憶していない人もいるのではないでしょうか。こうして、あらゆるものがデータベース化され、自分の脳を使わなくなっています。実際、現代の人間の脳は、1万2000年前に農耕牧畜を始めた頃の人類の脳より10%小さくなっているとする説もあります。われわれホモ・サピエンスより、既に滅びてしまったネアンデルタール人のほうが脳は大きかったこともわかっています。」
これは著書『スマホを捨てたい子どもたち』に前・京都大学総長の山極寿一が書いている文章です。脳が10%小さくなったという説が誰の研究によるものなのかなどは言及されていませんが、タイトルから分かるように、各種情報機器、取り分けスマホが生活に浸透するにつれて、人類の各種の能力が衰えて行っていることに警鐘を鳴らす内容の書籍です。
この文章に続いて、「記憶すること」から「考えること」にまで、人間が行なわなくてよいことは広がって行きつつあり、ますます脳の使用度合いが下がって行く傾向について述べられています。使用度合いが下がれば、それは生物にとって不要な能力であり、それを行なう器官ということになりますから、脳がさらに小さくなる可能性が否めなくなる訳です。
このブログ記事の『心身に負荷をかけるメリット』(二回シリーズ『(1)ホルミシス』・『(2)不便益』)でも述べた通り、人間にとって適切なレベルの負荷をかけることは、能力の伸長や向上につながります。それは、楽で快適な選択肢を意図的に避けて、面倒であったり苦痛であったりする選択肢を選ぶことに他なりません。
著者は「スマホ・ラマダン」を奨めるなど、記憶や思考をきちんと行なうことで、本来人間に備わっている能力の維持・伸長を呼びかけています。自分に負荷のかかる習慣作りには、無意識にそのルールを植え付ける催眠技術が非常に有効な手段です。
☆参考書籍:『スマホを捨てたい子どもたち』
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