心身に負荷をかけるメリット (1)ホルミシス

「ホルミシス(Hormesis)は冷たさ、熱さ、重力変化、放射線、食事制限、運動など害や苦痛を起こす刺激を少量から中程度まで与えることで得られる有益な効果を研究する科学分野である。」

これは『ドーパミン中毒』に載っている一節です。書籍では、ミミズなどの生物が好む20℃より高い35℃などの温度に2時間曝されるとそうではない個体より25%も長生きし、後に同程度の高温にも耐える能力が伸びたものの、2時間ではなく4時間熱に曝すと耐熱性は生まれず、寿命も4分の1に縮んだと説明されています。このような本来望ましくない刺激がプラスの効果を生む範囲をホルミシス・ゾーンと呼ぶことがあるようです。(英語ではHormetic Zone です。)

人間に対しても同様な現象は発生し、ホルミシス療法というと一般には低レベルの放射線を用いて多様な治療を行なう医療分野を指しています。こういった科学的な療法のみならず、ホルミシスの原理は私たちの日常の中でもよく見聞きします。たとえば短期間のファスティングなどと呼ばれる断食習慣です。

しかし、もっと私たちの生活の中に浸透したホルミシスがあります。冒頭で列挙した項目の最後にある運動です。運動は短期的で直接的な効果で言うと、有毒な参加体を体内に発生させ、酸素とグルコースを不足させ、筋組織を破壊します。けれども運動が心身の健康を促進するのは周知の事実です。

自分の心身に毒やストレスを与えることは、それが習慣化しない限り、基本的に心理的抵抗を生みます。催眠技術なら、自分をより良い状態にするために、または成長させるために、敢えて心身に毒やストレスを与えることを選ばせるよう、無意識のプログラミングをしてしまうことができます。スポーツ選手の厳しいトレーニングにおけるマインド・トレーニングなどの行為も、まさにそうした自己催眠の一端なのです。

☆参考書籍:『ドーパミン中毒