ある領域の特別な技能や知識を獲得した人を認知心理学などの分野で「熟達者」と呼びます。スウェーデンの心理学者K・アンダース・エリクソンはチェスやテニス、音楽等の芸術やスポーツ分野を題材に研究を掘り下げ、有名な「熟達化の10年ルール」を発表しました。10年ではなく、およそ10000時間の練習が紹介されていることから、「10000時間のルール」としても広く知られています。
しかし、『やり抜く力』の著者アンジェラ・ダックワースは、本の中で…
「たとえば調査対象の音楽家のなかにも、もっと早く最高水準まで達した人もいれば、さらに多くの時間がかかった人もいた」とエリクソンの研究を調べて指摘しています。その違いはどこから来るのかをエリクソンとも意見交換し、熟達者達が試みている「意図的な練習(deliberate practice)」の時間量に言及しています。
「意図的な練習」とは、単に10000時間や10年を費やして無為に練習を重ねるのではなく、戦略的に以下の条件を満たす練習を積み重ねることです。
1.ある一点に的を絞って、ストレッチ目標[高めの目標]を設定する。
2.しっかり集中して、努力を惜しまずに、ストレッチ目標の達成を目指す。
3.改善すべき点がわかったあとは、うまくできるまで何度でも繰り返し練習する。
ダックワースによると、多くの場合、「意図的な練習」は精神的に苦痛であり、1日に何時間も続けることが困難であるとされています。
無意識をコントロールできる催眠技術なら、この精神的苦痛を解消することができますから、「意図的な練習」の全練習量に対する割合を飛躍的に伸ばすことができます。スポーツ選手や芸術家のみならず、受験勉強などにおいても、メンタルトレーニングと呼ばれる自己催眠法が持て囃される理由はこんなところにも見つかるのです。
☆参考書籍:『やり抜く力 GRIT(グリット)』
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