20代後半の事務職の女性が仕事で失敗が続いて少々鬱気味になり、精神科医に行きました。鬱で投薬治療を何年も続けても治っていない友人のケースを知っていた彼女は、「薬の治療は受けたくない」と言いました。すると、その精神科医は「そんなんじゃ、絶対に治らない」と宣告したと彼女は言います。それ以降、彼女は精神科に行っていませんが、「自分は何も上手く行かない。自分は治らない精神病だ」と以前以上に不安に苛まれるようになったと言います。
実際に精神科医がそう言ったのかは定かではありませんが、「絶対に治らない」と言う彼女の認識は形成されてしまったようです。彼女の施術をすることになり、1回目のセッションでは、催眠の原理の説明をして、取り急ぎ「深呼吸と共に嫌な気持ちが吐き出される」暗示を入れて、変化を見ることにしました。
2回目のセッションで彼女は「日常生活を一応送れるようになったが、不安は常に湧いてくる」と説明するので、止む無く精神科医の言葉の呪縛に真っ向対抗することにしました。
「一般の人は、精神科医のことを「心の専門家」と思っているでしょうが、それは大いなる誤解です。僕はこのことを、「心の専門家幻想」と呼んでいます。(中略)精神科医は、いろいろな専門医の中でも、特に薬好きです。精神科医が「心の専門家」であると思っていると、医師も患者さんも互いに不幸です。現在では、臨床心理士やカウンセラーを備えた病院もあります。そのため、若い精神科医はますます、診療の範囲を診断、投薬に特化すればいいような風潮になっています」。
投薬治療を否定した医師の書いた『自分の「うつ」を直した精神科医の方法』の一部をまず音読してもらい、催眠状態にしてからは、私が同じ箇所を読み聞かせました。そして、「頑張っていると、すぐには結果は出ないが、どんどん積み重なって、あとで必ずいい結果になる」と言う暗示を書き込みました。
覚醒した彼女は、「あれ。なんだろ。私。全然、軽くなった感じ。息が凄い楽だし」と晴れ晴れとした表情になり、自分の明らかな変化に驚いていました。
精神科医の治療方針を私は否定する訳でもありません。医師の暗示力は吉田かずお先生も「白衣の暗示」と名づけるほど強いので、「白衣の暗示」で対抗してみたら上手く行ったのだと思います。
☆参考書籍:『自分の「うつ」を治した精神科医の方法』
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