回頭法という催眠誘導の方法があります。一般的には、「頭を回す」というと、首を前後左右に傾けつつ、頭頂が上から見て円を描くように動かすことを指します。催眠誘導法の書籍などでは、椅子に座った状態の対象者にそのまま前屈させて行って、最初の位置から頭で弧を描くように深く膝の方に頭を動かしつつ誘導することを指して、「回頭法」と呼んでいることが多いようです。
ところが、最近、吉田かずお先生と話していたら、一般的な意味での頭の動かし方をする「回頭法」を誘導法としてよく使うようになったと言っていました。つまり、対象者を座らせておくなどして、吉田先生が対象者の頭の上に手をおいて軽く頭を掴むようにし、頭部を(上から見て)円を描くようにぐるぐる回すということのようなのです。
吉田先生に拠ると、最近、医師に催眠施術の方法を教える機会が何度かあり、「催眠」という言葉を使わないで催眠誘導をする方法を習いたいと要望されるので、この本当に頭を回す「回頭法」を案出したようです。
「ちょっと、肩をほぐしましょう。首の力が入っていると、色々と診断できないから」などと言って、頭部を回し始め、だんだんと傾きを大きくして円の半径を伸ばし、「さあ、だんだんと力が抜けて楽になってくる」などと誘導のための暗示を入れるのだと言います。私には医師がそんなことをし始めたら、かなり怪しく感じられ、ラポールも壊れてしまいそうに感じられます。また、医師が行なう前提と言いますが、ベッドに横になっている患者には使えない方法であろうと思われます。
催眠をかけることを対象者に告げず催眠誘導することを「間接誘導」や「間接催眠」と呼ぶことがあります。脱力の上、リラックスさせることで誘導する弛緩系催眠は、リラックスを意識的に(集中して)行なわなければならないため、催眠と言わずに誘導することが困難です。苦肉の策がこうしたラジカルな新「回頭法」だったのでしょう。
吉田先生に拠ると、この新「回頭法」は吉田式呼吸法ほど深く入らないが、催眠誘導として十分に効果が出るとのことでした。しかし、比較的浅めの誘導でよいのなら、誰しも緊張は簡単にするので、緊張系の誘導をしてしまえば事足ります。吉田先生の催眠習得のメニューに緊張系催眠はありませんので、こうした新「回頭法」が必要になってしまうようでした。
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