催眠で入れた暗示内容は遺伝する? エピジェネティックス的な可能性

1944年オランダ西部ではナチスによる出入港禁止措置によって、450万人もの人々が飢餓や栄養失調に苦しむことになりました。7ヶ月も続いた「オランダの飢餓の冬」と呼ばれる状況で、4万人の赤ん坊が低体重で産まれました。母親達は同時期に同じ場所で同じ体験をしたことから、母体の栄養不足の子どもの長期的な健康への影響が、偶然調査できる条件が整ったのです。

調査の結果、「飢餓の冬」に生まれた赤ん坊は低体重で生まれたにもかかわらず、成人後は高い確率で肥満となり、糖尿病、高血圧、心血管疾患、微量アルブミン尿症などの病気を発症することになり、同じ傾向の問題は孫の世代にまで確認できたと言います。

この調査結果を簡単にまとめると、「DNAの中の遺伝子は、一生固定しているように考えられてきたが、後天的に得られた形質も遺伝する可能性がある」と言うことになります。このような遺伝子そのものに拠らない遺伝状態の発現を研究する学問分野をエピジェネティックスと呼ぶようです。

アルコールや薬物などへの依存症になりやすい遺伝子もあり、頭の良し悪しに深く関係するであろう遺伝子も発見されています。しかし、遺伝子そのものの決める所ではない後天的な要素も親から子へと遺伝することになります。現状の研究結果では、母から子へと卵細胞を通じて、母の後天的に獲得された形質が遺伝することがあるということのようです。

催眠技術によって、生活習慣を望ましいものへと大きく変えたり、勉強などの知的活動に関心を湧かせ強化したりすることも簡単にできます。そのようにして対象者の女性が得た習慣や能力は、子供へと受け継がれる可能性も一応考えられるということのようなのです。