書店のビジネス書売場に行くと、マーケティングなどの分野で“インサイト”という言葉を含むタイトルの本が目につくようになりました。「インサイト・セールス」といった言葉もあります。
ビジネス書やネットの記事が紹介するインサイトを簡単に言うと、「人を動かす隠れた欲求」のようなもののようです。「隠れた」というところがミソで、大抵自分でも意識できないことが強調されています。これはシンプルに言えば「無意識」です。
モノやサービスの販売の場面のみならず、人間の行動は無意識下の遺伝的に持っている性向、後天的に学んだ事柄など、数々の要素が絡み合う中で、人間の行動は決められています。(その決定要因の中には、古典的に「ニーズ」と理解されているものも含まれています。)現在となっては、「意識は何等の意思決定にも関与していない」とする考え方が一般的です。このブログでも以前に紹介した、自動車購入の価格交渉をする心理学の実験で、硬い椅子に座った被験者はディーラー相手に強硬な交渉をし、ソファに座った被験者は価格の引き上げに柔軟に応じるという結果などにみる「感情プライミング」と呼ばれる現象も、間違いなく「インサイト」に含まれることでしょう。
ですので、「インサイト」は「人を動かす隠れた無意識の構造」とでも括った方が良さそうです。無意識は人間の総てを実質的に司っているので、その特徴に則ったり、その構造を書き換えたりすることができれば、モノやサービスの販売の場面で有利になることは間違いありません。吉田かずお先生によると、無意識の中の事柄の書換技術は、すべて「催眠」ですから、インサイトを活用したマーケティング技術も実質的にすべて「催眠」なのです。
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