『「心の病」の脳科学』(講談社BLUE BACKS)にはストレスで脳内炎症が起きるメカニズムが説明されています。
「脳をつくる細胞は、神経細胞とグリア細胞に大きく分けられます。脳内で炎症に強く関わるのはミクログリアというグリア細胞の一種です。ミクログリアは脳における免疫を担当しており、異物がないかどうかセンサーで常に探索しています。そして異物を発見するとミクログリアは活性化して異物を排除します。このとき、炎症が起きます。
ミクログリアが異物を探すとき重要なはたらきをするセンサーが、Toll様受容体(Toll-like receptor: TLR)です。ウイルスや細菌など病原体由来の異物をTLRが捕まえるとミクログリアが活性化して脳内炎症が起きるのです。
TLRは、ウイルスや細菌に感染していないときにも働くことが分かってきました。(中略)
病原体に感染していなくても、ストレスによって内側前頭前野でダメージ関連分子が発生し、それをTLRが捕まえてミクログリアが活性化し、脳内炎症が起きて、樹状突起が退縮し、うつ病が発生するという仮説が考えられます」
同書では、脳内以外でも炎症という現象を掘り下げ…
「近年、がんや発達障害・精神疾患、生活習慣病など、さまざまな疾患が炎症と関係していることが分かってきました。炎症によって特定の遺伝子群に異常が現れ、さまざまな疾患の発症原因になると考えられています」
と述べており、驚くことにがんとASDの間にさえ、特定の遺伝子異常が共通に存在していると指摘しています。ストレスが過剰にかかると免疫力が落ちるとよく言われますが、ストレスによって炎症が起きるのは病原体によるものばかりではなく、結果的に鬱さえストレスによる脳内炎症の結果であると考えられているのです。
ストレス・コントロールなどの目的で自己催眠技術に関心を持つ人が増えていますが、こうした炎症の抑制に催眠技術の意義は大きいようです。
☆参考書籍:『「心の病」の脳科学』
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