田坂広志という人物によって著された『死は存在しない』という書籍が売れています。この書籍のサブタイトルは『最先端量子科学が示す新たな仮説』で、著者は原子力工学の権威です。宇宙の始まりのビッグバンの以前には「量子真空」と呼ばれる何もない状態があり、それが「ゆらぎ」を起こした結果、極微小の宇宙を生み出し、それが膨張を続けて現在の宇宙ができたと著者は説明します。
そして、この量子真空の中に「ゼロ・ポイント・フィールド」と呼ばれる場があり、この場に、この宇宙すべての出来事のすべての情報が「波動情報」の形で記録されているというのが、著者が説明する「ゼロ・ポイント・フィールド仮説」なのです。
すべてのものは超ミクロレベルでは物質の体を成さず「波動」ですから、全宇宙の波動の情報がゼロ・ポイント・フィールドには蓄積されており、過去・現在の波動がすべて存在していることになります。そして、過去・現在の波動から、未来の波動も予測できるとされています。著者は、仏教の「唯識思想」における「阿頼耶識」と呼ばれる意識の次元や古代インド哲学の思想「アーカーシャ」の一部に、ゼロ・ポイント・フィールドと極めてよく似た考えを見ることができるとも述べています。
(「アーカーシャ」だと分かりにくいかもしれませんが、元始からのすべての事象、想念、感情が記録されているという世界記憶を意味する「アカシック・レコード」が、まさにゼロ・ポイント・フィールドに酷似しています。)
興味深いのはこのゼロ・ポイント・フィールドと個々人の結節点です。著者は「超個的無意識」や「超時空的無意識」という言葉を挙げて、その結節点が深い無意識であると述べています。つまり、人間は全体が深い無意識のレベルで繋がっており、それは人間同士が繋がっているのみならず、(ゼロ・ポイント・フィールドの記録は生物を対象としたものに限らないので)森羅万象、それも過去から現在、そして未来に関わる情報に接続されているという構造を意味しているのです。
著者が「超個的無意識」や「超時空的無意識」と呼ぶ概念をユングは20世紀前半には既に「集合的無意識」という形で指摘していますが、ゼロ・ポイント・フィールド仮説によって物理的にも、その説明ができる道が開けたと考えることができるでしょう。多くの予知や透視、降霊や預言なども、(その内容の効果や科学的妥当性は置いておき)ゼロ・ポイント・フィールド仮説で科学的原理自体は説明できることになります。
催眠技術は無意識のコントロールをする技術ですが、催眠施術を重ねると超自然的な能力や感覚が芽生えてくる事例が多々知られています。深い無意識へのアクセスを催眠施術で重ねると、ゼロ・ポイント・フィールドへのアクセス量も増えてくる結果と考えることが一応できるものと思います。
☆参考書籍:『死は存在しない ― 最先端量子科学が示す新たな仮説』
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