「ゼロ・ポイント・フィールド仮説」の示唆 (1)死後の世界

田坂広志という人物によって著された『死は存在しない』という書籍が売れています。この書籍のサブタイトルは『最先端量子科学が示す新たな仮説』で、著者は原子力工学の権威です。

宇宙の始まりのビッグバンの以前には「量子真空」と呼ばれる何もない状態があり、それが「ゆらぎ」を起こした結果、極微小の宇宙を生み出し、それが膨張を続けて現在の宇宙ができたと著者は説明します。この量子真空は、いまもこの宇宙のすべての場所に普遍的に存在していて、いわば、私達が活きているこの世界の背後に無限のエネルギーに満ちた量子真空の世界が広がっている状態です。そして、この量子真空の中に「ゼロ・ポイント・フィールド」と呼ばれる場があり、この場に、この宇宙すべての出来事のすべての情報が「波動情報」の形で記録されているというのが、著者が説明する「ゼロ・ポイント・フィールド仮説」なのです。

すべてのものは超ミクロレベルでは物質の体を成さず「波動」ですから、全宇宙の波動の情報がゼロ・ポイント・フィールドには蓄積されており、過去・現在の波動がすべて存在していることになります。そして、過去・現在の波動から、未来の波動も予測できるとされています。

人間個々人も生まれた時からゼロ・ポイント・フィールドに波動が蓄積されて行き、市と同時に波動情報の更新が無くなりますが、過去の情報として永遠にゼロ・ポイント・フィールドに情報が残されます。ですので、死と共に肉体はなくなりますが、その人物の生きてきた人生のすべての記録が生きている時と同様にゼロ・ポイント・フィールドに残り続け、ゼロ・ポイント・フィールドにアクセスすると常にそこに生きている時のように存在し続けているということなのです。

ただ、原理上、生きている時の人間は無意識の深層でゼロ・ポイント・フィールドに接続されている、ホストコンピュータに対する端末装置のような立場ですが、死と共にホストコンピュータの情報の一部に取り込まれるため、生きていた時の情報を維持しつつも、全宇宙の情報やその背景を知った「全体意思」のようなものの一部として残るということのようです。

量子力学の科学的な仮説が、(人を戒めるために創られたと考えられる地獄などの死後の世界観などはさておき)臨死体験や降霊などの各種の現象を説明し得る可能性を孕んでいることは注目に値します。また、そのゼロ・ポイント・フィールドへの個人の接続箇所が、深い無意識であるとされていることは、その無意識のコントロールをする催眠技術の立場からも非常に重大な意味を持つと考えられるのです。

☆参考書籍:『死は存在しない ― 最先端量子科学が示す新たな仮説